ESG情報

TCFD提言への賛同
(TCFD提言に基づく気候関連の情報開示)

当社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、
今後も気候変動問題への対応を推進していきます。

当社では、2024全社環境管理方針として以下のように定め、環境への取り組みを行っています。

2024全社環境管理方針

環境に配慮した事業活動を推進し、環境を保全し、持続可能な社会の実現を目指す。

  1. 環境保全に取り組む。
  2. CN(カーボンニュートラル)の推進に取り組む。
  3. 省資源・資源循環に取り組む。

2020年に日本政府よりカーボンニュートラルを目指すことが宣言され、企業経営の脱炭素化へのシフトがますます求められています。また、2021年6月にはコーポレートガバナンス・コード[1]改定により、プライム市場上場企業はTCFD提言に基づく開示が要請され、さらには、2023年3月期から、有価証券報告書において、TCFD提言に準拠した情報開示が求められるようになりました。気候関連への対策及び情報開示の重要性が高まっている状況を踏まえ、当社ではTCFD提言に基づき、気候関連に関する情報を開示しています。また、IFRS S2[2]やSSBJ[3]による基準の動向を踏まえ、開示内容を更新予定です。

  • 1.^東京証券取引所が定めた、コーポレート・ガバナンス(会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み)を実現するための主要な原則の取りまとめ。
  • 2.^TCFD提言の開示推奨項目に合致する形で、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)より発行された、気候関連の開示基準。
  • 3.^サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)。ISSBをはじめとする国際的なサステナビリティ開示基準開発への対応及び国内のサステナビリティ開示基準の開発を担う。

ガバナンス

当社は、気候関連のリスク・機会[4]を経営戦略・事業活動に反映していくため、気候変動に関するガバナンス体制[5]を構築しています。

■気候関連のリスク・機会を評価・管理する上での経営者の役割

当社においては気候変動を重点分野として定め、気候変動に関する議案を審議する機関として、常務執行役員を委員長とし、各役員を委員とするカーボンニュートラル推進委員会を設置しています。気候変動に関する基本方針や重要事項は、カーボンニュートラル推進委員会(事務局:環境事業部長、舗装事業企画室長)が各部門の報告を取りまとめ、同委員会にて審議を行ったのち、常務会および代表取締役社長に付議・報告され、また、重要事項は経営委員会および取締役会へ付議・報告されます。

■気候関連のリスク・機会についての取締役会による監視体制

気候変動に関する重要事項は代表取締役社長から経営委員会を経て取締役会に年1回以上の頻度で報告され、取締役会は気候変動を含む重要な業務執行の決定や監視を行います。

気候変動に関するガバナンス体制
気候変動に関するガバナンス体制
  • 4.^気候対策が積極的に行われた低炭素経済への移行に伴い生じる移行リスク・機会と、気候対策が十分に行われず、洪水や暴風雨等頻度増加・激甚化によってもたらされる物理リスク・機会を指す。詳細は「戦略」に記載。
  • 5.^気候変動に関する取り組みを重点課題と捉え、全社で気候変動に対応するための管理体制。

戦略

当社では2024全社環境管理方針の下、気候変動への対策に既に取り組んでいますが、今後起こり得る様々な事態に備え、事業活動に影響を与え得るリスク・機会を特定しています。今後想定される気候変動シナリオの下、リスク・機会の財務影響を評価し、経営に反映していきます。

■想定シナリオ

気候変動は中長期的な事象であるため、単一のシナリオではなく、複数の気温上昇シナリオを想定して、リスク・機会を特定・評価し、対策を行う必要があります。本分析では、様々な気候緩和策の実施により、産業革命以前と比較した2100年の気温上昇が1.5℃になるシナリオ、現状の化石燃料依存が続き、気温上昇が4℃になるシナリオを用いました。各想定シナリオは、IPCC[6]やIEA[7]によって発行された、公的な資料を基に検討を行っています。

想定シナリオ 世界観 主要参考資料
1.5℃シナリオ 世界のCO2(二酸化炭素)排出量が2050年実質ゼロとなるべく、各国が様々な緩和策を実行する世界 ・IPCC[6] SSP1-1.9
・IEA[7] Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)
・IEA Announced Pledges Scenario(APS)
4℃シナリオ 現状の化石燃料依存が続き、追加的な緩和策が実行されない世界 ・IPCC SSP5-8.5
・IEA Stated Policies Scenario(STEPS)
  • 6.^気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)。各国政府の気候変動に関する政策に対し、科学的な基礎を提供することを目的として設立された、政府間組織。
  • 7.^国際エネルギー機関(International Energy Agency)。エネルギー安全保障のため、石油消費国間で協力を行うことを目的して設立された機関。
主要参考資料概要
  • IPCC SSP1-1.9
    持続可能な発展の下、気温上昇を約1.5℃以下に抑える気候政策を導入し、2050年頃にCO2排出量が正味ゼロとなるシナリオ
  • IPCC SSP5-8.5
    化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しないシナリオ
  • IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)
    エネルギーに関する、国連の持続可能な開発目標の主要項目を満たす、ネットゼロ排出シナリオ
  • IEA Announced Pledges Scenario(APS)
    各国政府による気候変動関連の公約が、完全かつ期限内に達成されると想定したシナリオ
  • IEA Stated Policies Scenario(STEPS)
    現在の政策設定を反映させ、新たな政策を実施しない既存政策シナリオ
シナリオ別の気温上昇予測
環境省「IPCC 第6次評価報告書の概要 -統合報告書-」より作成
環境省「IPCC 第6次評価報告書の概要 -統合報告書-」より作成
IEA「World Energy Outlook 2023」より作成
IEA「World Energy Outlook 2023」より作成

■リスク・機会

気候関連のリスクは、気候対策が積極的に行われた低炭素経済への移行に伴い生じる移行リスクと、気候対策が十分に行われず、洪水や暴風雨等の頻度増加・激甚化によってもたらされる物理リスクに大別されます。これら2つのリスクに加え、気候変動に伴い需要拡大や新たな事業が進展するなどの機会を洗い出し、分析・評価を行っています。財務インパクト評価では、公的な将来予測モデル等の参照可能なデータが豊富である点、社内における事業計画との連携が比較的容易である点から、2030年度における影響を評価しています。発現時期は、リスク・機会の影響が現れる時期を指し、「短期:3年以内、中期:~2030年、長期:~2050年」と定義・分類しています。財務影響については、売上への影響は当社売上高、費用への影響は当社経常利益を基に、「小:~2% 中:2%~10% 大:10%~ 」で分類しています。

(低炭素経済への移行に伴い生じる)移行リスク
分類 項目 内容 シナリオ 発現時期 財務影響 対応策
政策・法規制 炭素価格
  • 化石燃料輸入事業者に対する炭素賦課金の支払い義務(2028年導入予定)や炭素価格導入によりアスファルトや合材製造等の価格が上昇し、原材料費が増加
1.5℃ 中期
  • 需要管理を通じた製品製造量の最適化によるエネルギー使用量削減
  • 事務所の省エネルギー化によるエネルギー使用量削減
  • サプライチェーンの再構築によるエネルギー使用量削減
  • 車両の電動化等による燃料使用量削減
  • 太陽光発電等の創エネ推進によるエネルギー購入量削減
  • 製品製造時のエネルギー効率向上
  • エネルギー使用量が少ない設備、機器の使用拡大
  • 代替燃料や再エネ電力等の利用による施工時のエネルギー排出原単位削減
  • 取引先に対してGHG排出量の少ないエネルギーへの転換要請
  • 事業活動により排出されるCO2に対して課税が強化され、事業費用が増加・・・①
1.5℃ 中期
GHG排出規制への対応
  • 排出量の上限規制強化により、カーボンニュートラル対応の再エネ、新エネ導入が必要となる、製造費用が増加・・・②
1.5℃ 中期
技術 再エネ・省エネ技術の普及
  • サプライチェーンの再エネ、省エネ技術が普及しないことにより、排出量削減が進まず受注機会が減少
  • 技術開発の遅延、低炭素設計、施工の技術者不足により受注機会が減少
1.5℃ 中期
  • 取引先に対してGHG排出量の少ないエネルギーへの転換要請
  • サプライチェーンの再構築による排出原単位の少ない原材料購入
  • 脱炭素技術開発への積極的な投資による機会逸失の回避
  • 建築物における省エネ設計の積極採用
市場 エネルギー需要推移
  • 国内での原油使用量減少によりアスファルトの供給が困難になり、高価な新材料や代替原料の導入による費用が増加
1.5℃ 中期
  • 新材料、代替原料開発企業との早期関係構築による原料価格低減
  • 製造工程の最適化による原材料使用量削減
重要商品/製品価格の増減
  • 原材料採取制限により資材価格が高騰し調達費用が増加
  • 主要資材、セメント、アスファルトの低炭素化が進み、調達費用が増加
1.5℃ 中期
  • 建築物の省エネ化に対応しないことによる売上減少
1.5℃ 中期
評判 -
  • 環境課題への対応の遅れにより、企業イメージが低下し、人員減少による売上減少
1.5℃ 中期
  • 環境関連事業の技術開発推進による企業イメージ向上
  • 早期からの脱炭素関連工事の受注積極化による企業イメージ向上
  • 気候変動に関する速やかな情報開示による企業イメージ向上
※表内の〇付き数字は、次ページ「現在の取り組み」の番号を表しています。
(洪水や暴風雨等の頻度増加・激甚化によってもたらされる)物理リスク
分類 項目 内容 シナリオ 発現時期 財務影響 対応策
慢性リスク 平均気温の上昇
  • 建設技能労働者の健康被害(熱中症等)の増加や酷暑時間帯回避による生産性が低下
4℃ 中期
  • 作業者の体調管理徹底による生産性確保
  • 省力化技術やICTツールを活用した作業環境の改善による生産性向上
  • 気温上昇に対応した製品、技術の開発、採用による製品品質確保
  • 就業者の減少による人件費高騰
4℃ 短期
  • 過酷な気象条件に対応できる製品品質の確保が困難・・・③
4℃ 中期
降水・気象パターンの変化
  • 気象変化に対応した技術開発が求められ費用が増加
4℃ 中期
  • 早期からの技術開発による、局所的な費用発生回避
  • 既存技術の転用による開発費用削減
急性リスク 異常気象の激甚化
  • 施工の仮設や養生工程の作業時間のロス発生や降雨により被害を受け費用が増加
4℃ 中期
  • 異常気象の被害、作業ロスを踏まえた作業計画による、追加費用の回避
  • 不動産の耐久性向上による被災ダメージ削減
  • 保険加入やリスク評価による被災リスク回避
  • 調達サプライチェーンの連携強化による有事発生時費用削減
  • 自社の保有不動産が被災し、人的被害や再調達費用が発生することに加え、地域の被災により資機材の調達が困難になるため復旧が遅延
4℃ 中期
※表内の〇付き数字は、次ページ「現在の取り組み」の番号を表しています。
機会
分類 項目 内容 シナリオ 発現時期 財務影響 対応策
資源の効率 製造・流通プロセスの効率化
  • 合材製造、配送プロセスのDX、ICT化推進によるオペレーションの集約や、長距離輸送が可能な技術開発による製造拠点の集約により、費用が減少
1.5℃
4℃
中期
  • 各工場における受注、運搬状況の分析による集約可能な工場の把握、集約化
  • 技術開発による長距離輸送実現
エネルギー 新規技術の利用
  • 大型車の隊列輸送、自動運転の普及、インフラの高度化(給電舗装、太陽光発電舗装等)により、高付加価値舗装の需要が拡大
1.5℃ 中期
  • 早期からの技術開発による高付加価値舗装の安定的な提供
  • 高付加価値需要の早期把握を通じた受注機会拡大
製品/サービス 低炭素製品・サービスの開発・拡大
  • 中温化舗装、常温、中温化混合物の需要が拡大し、費用が減少
1.5℃ 中期
  • 製品、施工の品質向上を契機とした事業機会拡大
  • 再生エネルギー関連工事の受注拡大
  • 損傷が軽微な段階における予防保全営業の積極化
  • 高耐久舗装やリサイクル製品の新規開発、販売
  • 舗装診断技術による舗装マネジメント提案を通じた受注機会拡大
  • 太陽光、洋上風力等の再生可能エネルギー関連工事の需要拡大
1.5℃ 短期
  • 気温上昇やEV普及によりアスファルト舗装への負荷が大きくなることで、道路修繕周期が短くなるため、事業機会が増加
1.5℃
4℃
中期
研究開発・イノベーションによる新規商品・サービスの開発
  • アスファルト廃材、コンクリート廃材のリサイクル技術の進展による新たな事業の創出
1.5℃ 中期

■現在の取り組み

特定したリスク・機会の中で、影響が特に大きいと認識した3項目において、既に実施している対策を紹介します。

① 製造時CO2排出量の削減(リスク内容:事業活動により排出されるCO2に対して課税が強化され、事業費用が増加)
高効率バーナへ切り替え
高効率バーナへ切り替え

当社ではCO2の排出量を削減するため、CO2フリー電力への切り替えを実施済みです。
また、省エネルギー型の設備や機器類も積極的に配備しており、2022年度末時点、省エネ型の高効率バーナを導入した合材工場が116カ所となっています。
さらに、機械式フォームドアスファルト装置によりアスファルト合材の製造温度を下げる中温化技術(ECOフォームド)を導入し、アスファルト合材の製造時の化石燃料消費量を削減することで、CO2削減を進めています。

フォームドアスファルト イメージ
フォームドアスファルト イメージ
② 燃料転換(リスク内容:排出量の上限規制が強化され、カーボンニュートラル対応の再エネ・新エネ導入が必要となり製造費用が増加)

工場で使用する燃料を重油類から都市ガスへ切り替えを進めており、一部の工場では、カーボンニュートラル都市ガスを導入済みです。

燃料転換
③ 過酷な気象条件に対応した舗装技術の開発(リスク内容:過酷な気象条件に対応できる製品品質の確保が困難)

当社では、気温上昇による舗装変状を防止し舗装の耐久性を高めることでCO2排出量を削減する技術として、路面温度を低減する遮熱舗装(パーフェクトクール)や保水性舗装(クールポリシール)のほか、舗装自体の耐久性を高めた高耐久舗装(ポリシールLCリペットペーブハードアスコン等)の技術を保有しています。

遮熱舗装(パーフェクトクール)

アスファルト舗装は、夏の強い日差しを浴びて路面が60℃以上の高温になります。「パーフェクトクール」は、太陽光に含まれる赤外線を高反射させることで、路面温度の上昇を抑制し、舗装の耐久性を向上させることが可能です。本技術は2009年に国際道路連盟 (IRF)で 世界道路功績賞を、2011年に世界道路協会(PIARC) で最優秀革新賞を受賞しています。

パーフェクトクールコート模式図
パーフェクトクールコート模式図
サーモグラフによる路面温度比較 / パーフェクトクールコート施工例(車道 高知県高知市)
左:サーモグラフによる路面温度比較
右:パーフェクトクールコート施工例(車道 高知県高知市)
高耐久舗装(ハードアスコン)

ハードアスコンは、アスファルト混合物にエポキシ樹脂を添加することで、混合物の耐久性を向上させる舗装技術です。気温が高い環境においても、道路の長寿命化が可能です。

ハードアスコン舗装断面図
ハードアスコン舗装断面図
ハードアスコン施工例(工場・倉庫構内)
ハードアスコン施工例(工場・倉庫構内)

今後、より過酷な自然環境が想定されることを踏まえ、新技術・新工法の開発を進めてまいります。

リスク管理

気候関連のリスクは経営戦略・事業活動に大きな影響を有すると考えており、当社は組織全体のリスク管理体制へ気候関連のリスクを統合しています。

■組織が気候関連のリスクを選別・評価・管理するプロセス

気候関連のリスクに関しては、カーボンニュートラル推進委員会にて各部門の事業に関する気候関連のリスクの選別および事業への影響度の評価を行い、管理を行っています。

■選別・評価・管理するプロセスの総合的リスク管理への統合

特に重要リスクに関しては代表取締役社長から経営委員会を経て取締役会に報告されており、当社事業に多大な影響を与える他リスクと合わせ総合的に管理し、リスクの回避やリスクが顕在化した場合の影響を最小化するための対策等について議論し、意思決定を行っています。

指標と目標

気候関連のリスク・機会に対処していくための指標・目標として、CO2排出量を管理しています。

2030年度までにスコープ1・2の2020年度比42%削減、スコープ3の2020年度比25%削減を目標に、削減に取り組んでまいります。

CO<sub>2</sub>排出量削減計画
CO2排出量削減計画

特に、スコープ1・2は自社からの排出であり、主要な責任があること、削減対策が排出量に大きく寄与することから、第一に取り組む必要があると考えています。スコープ2の削減に向け、対応可能な全事業所において、CO2フリー電力への切り替えを実施しています。また、スコープ1の削減に向けた活動の一環として、重油から都市ガス等への燃料転換を計画・実施しています。今後も2030年度目標に向けて、CO2排出削減の取り組みを推進してまいります。

スコープ1削減に向けた、燃料転換の取り組み
スコープ1削減に向けた、燃料転換の取り組み
CO<sub>2</sub>排出量と削減実績・目標
CO2排出量と削減実績・目標