TCFD提言への賛同
(TCFD提言に基づく気候関連の情報開示)
当社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、
今後も気候変動問題への対応を推進していきます。
当社では、2026全社環境管理方針として以下のように定め、環境への取り組みを行っています。
2026全社環境管理方針
環境に配慮した事業活動を推進し、環境を保全し、持続可能な社会の実現を目指す。
- 環境保全に取組む。
- CO2削減に取組む。
- 省資源・資源循環に取組む。
2020年に日本政府がカーボンニュートラルの実現を宣言して以降、脱炭素は、企業経営の重要な前提条件となっています。2023年には、コーポレート・ガバナンス・コード[1]の改訂や開示制度の見直しを背景に、有価証券報告書において、TCFD提言に準拠した情報開示が求められるようになりました。当社は2024年11月より、TCFD提言に基づく気候関連の情報開示を行ってまいりました。今般、気候関連情報開示の継続的な改善を目的として、開示内容の表現および、リスクと機会の構成見直しを行いました。
現在、TCFD提言の考え方は、国際的なサステナビリティ開示基準(IFRS S2[2])へと引き継がれています。日本においても、サステナビリティ基準委員会(SSBJ[3])により、2025年に開示基準が整備されました。
当社は今後、これらの制度動向を踏まえ、適切に情報開示を行ってまいります。
ガバナンス
当社は気候変動を重点分野として定めており、気候関連のリスク・機会[4]を評価・管理し、経営戦略や事業活動に反映していくため、気候変動に関するガバナンス体制[5]を構築しています。
■気候関連のリスク・機会を評価・管理する体制
気候関連のリスク・機会を評価・管理し、関連する議案について審議する機関として、常務執行役員を委員長、各役員を委員とするCO2削減委員会を設置しています。気候変動に関する基本方針や重要事項は、CO2削減委員会(事務局:環境事業部長、舗装事業企画室長)が各部門の報告を取りまとめ、同委員会にて審議を行ったのち、年1回以上の頻度で常務会および代表取締役社長に付議・報告されます。また、重要事項は取締役会へ付議・報告され、取締役会は当該重要事項および気候関連の目標・進捗について監督行います。
■気候関連のリスク・機会についての経営者の役割
気候関連のリスク・機会の管理にあたって審議された重要事項については、代表取締役社長から取締役会に報告され、取締役会は業務執行上重大な決定や方針の監督を行います。
気候変動に関するガバナンス体制
戦略
当社では2026全社環境管理方針の下、気候変動への対策に既に取り組んでいますが、今後起こり得る様々な事態に備え、事業活動に影響を与え得るリスク・機会を特定しています。今後想定される気候変動シナリオの下、リスク・機会の財務影響を評価し、経営に反映していきます。
■想定シナリオ
気候変動は中長期的な事象であるため、CO2削減に向けた取り組みが進み規制等が厳しくなる場合と、追加的な規制等が取られない場合の両者を想定して、リスク・機会を特定・評価し、対策を行う必要があります。本分析では、様々な気候緩和策の実施により、産業革命以前と比較した2100年の気温上昇が1.5℃になるシナリオ、現状の化石燃料依存が続き、気温上昇が4℃になるシナリオを用いました。各想定シナリオは、IPCC[6]やIEA[7]によって発行された、公的な資料を基に検討を行っています。本分析は、当社の主力事業である道路舗装・土木事業、建築・開発事業およびアスファルト合材の製造・販売事業を主な対象として、気候変動による影響を評価しています。
| 想定シナリオ | 世界観 | 主要参考資料 |
|---|---|---|
| 1.5℃シナリオ | 世界のCO2(二酸化炭素)排出量が2050年実質ゼロとなるべく、炭素税の導入や排出規制の大幅な強化に伴い、企業の 脱炭素が当たり前になった世界 | ・IPCC[6] SSP1-1.9 ・IEA[7] Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE) |
| 4℃シナリオ | 現状の化石燃料依存が続き、炭素税の導入や排出規制がされず、気象災害による直接的な被害が企業の存続を左右する最大の要因となる世界 | ・IPCC SSP5-8.5 ・IEA Stated Policies Scenario(STEPS) ・IEA Current Policies Scenario(CPS) |
主要参考資料概要
- IPCC SSP1-1.9
持続可能な発展の下、気温上昇を約1.5℃以下に抑える気候政策を導入し、2050年頃にCO2排出量が正味ゼロとなるシナリオ。SSP1-1.9は、急速かつ大規模なGHG削減、社会の大きな転換が想定されている。そのため、脱炭素に向けた技術の進歩や、社会全体の取り組み具合、気候変動の応答性など多くの不確実性を含んでいる。 - IPCC SSP5-8.5
化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しないシナリオ。 - IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)
エネルギーに関する、国連の持続可能な開発目標の主要項目を満たす、ネットゼロ排出シナリオ。 - IEA Current Policies Scenario(CPS)
世界各国が今の政策を何も変更せずに現在の道をそのまま歩み続けた場合にどうなるかを示したシナリオ。 - IEA Stated Policies Scenario(STEPS)
現在の政策設定を反映させ、新たな政策を実施しない既存政策シナリオ。
シナリオ別の気温上昇予測
■リスク・機会
気候関連のリスクは、気候対策が積極的に行われた低炭素経済への移行に伴い生じる移行リスクと、気候対策が十分に行われず、洪水や暴風雨等の頻度増加・激甚化によってもたらされる物理リスクに大別されます。これら2つのリスクに加え、気候関連の機会を洗い出し、NIPPOを対象に分析・評価を行っています。財務インパクト評価では、公的な将来予測モデル等の参照可能なデータが豊富である点、社内における事業計画との連携が比較的容易である点から、2030年度における影響を評価しています。発現時期は、リスク・機会の影響が現れる時期を指し、「短期:3年以内、中期:~2030年(SDGs2030年目標、SBT削減目標)、長期:~2050年(CO2削減目標期間)」と定義・分類しています。財務影響については、売上への影響は当社売上高、費用への影響は当社経常利益を基に、「小:~2% 中:2%~10% 大:10%~ 」で分類しています。
(低炭素経済への移行に伴い生じる)移行リスク
財務影響:*は利益、**は売上への影響
| 分類 | 項目 | 内容 | シナリオ | 発現時期 | 財務影響 [想定] (億円) |
算出方法 | 対応策 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 政策・法規制 | 炭素価格 |
|
1.5℃ | 中期 | 中 14.4* |
アスファルトのCO2排出量×炭素価格×為替レート |
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1.5℃ | 中期 | 大 41.8* |
Scope1,2排出量×炭素価格×為替レート | |||
| GHG排出規制への対応 |
|
1.5℃ | 中長期 | 大 148* |
・再エネ導入 再エネ導入量×再エネ単価-現状のエネルギー単価 ・設備投資 再エネ導入量×設備容量×設備投資額 |
||
| 技術 | 再エネ・省エネ技術の普及 |
|
1.5℃ | 中長期 | 小 57.2** |
売上×受注減少率 |
|
| 市場 | エネルギー需要推移 |
|
1.5℃ | 中長期 | 小 3.0* |
アスファルト合材製造量×新材料・代替原料使用率×[新材料・代替原料価格ー現状材料価格] |
|
| 重要商品/製品価格の増減 |
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1.5℃ | 中長期 | 中 8.5* |
カーボンオフセット単価×資材のCO2排出量 | ||
|
1.5℃ | 中期 | 中 152** |
建築事業売上×新築事業割合×ZEB/ZEH未対応による失注率×実現率 | |||
| 評判 | - |
|
1.5℃ | 中長期 | 中 146** |
売上÷従業員数×年間人員減少数 |
|
(洪水や暴風雨等の頻度増加・激甚化によってもたらされる)物理リスク
財務影響:*は利益、**は売上への影響
| 分類 | 項目 | 内容 | シナリオ | 発現時期 | 財務影響 [想定] (億円) |
算出方法 | 対応策 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 慢性リスク | 平均気温の上昇 |
|
4℃ | 中期 | 中 111** |
売上×生産性低下率 |
|
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4℃ | 短中期 | 大 80.2* |
人件費×賃金上昇率 | |||
|
4℃ | 中長期 | 大 59* |
アスファルト合材製造量×対策による価格上昇率 | |||
| 降水・気象パターンの変化 |
|
4℃ | 中長期 | 小 1.5* |
1テーマの研究費×取り扱いテーマ数 |
|
|
| 急性リスク | 異常気象の激甚化 |
|
4℃ | 中長期 | 中 19.8* |
売上×被災した工事の割合×工事費増加率 |
|
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4℃ | 中期 | 小 6.2* |
保有不動産評価額×被災割合×1不動産における損壊割合 |
機会
財務影響:*は利益、**は売上への影響
| 分類 | 項目 | 内容 | シナリオ | 発現時期 | 財務影響 [想定] (億円) |
算出方法 | 対応策 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資源の効率 | 製造・流通プロセスの効率化 |
|
1.5℃ 4℃ |
中期 | 中 24* |
1工場当たりの費用×削減工場数 |
|
| エネルギー | 新規技術の利用 |
|
1.5℃ | 中長期 | 中 220** |
売上×高付加価値舗装工事の割合 |
|
| 製品/サービス | 低炭素製品・サービスの開発・拡大 |
|
1.5℃ | 中期 | 小 0.5* |
ECOフォームド出荷量×燃料消費量×燃料消費削減率×燃料単価 |
|
|
1.5℃ | 短中期 | 小 13.4** |
再エネ関連工事規模×再エネ設備増加率 | |||
|
1.5℃ 4℃ |
中長期 | 中 336** |
修繕工事売上×修繕周期増加率-修繕工事売上 | |||
| 研究開発・イノベーションによる新規商品・サービスの開発 |
|
1.5℃ | 中期 | 小 60** |
特殊工法売上×想定増加割合 |
■現在の取り組み
シナリオ分析の結果、特に影響が大きいと考えた3つの課題について、リスクを減らしながら環境に配慮した舗装や省エネにつながる工事など、新たな受注や製品・サービスの広がりにもつなげられるように、対策を進めてきました。ここでは、既に実施している対策を紹介します。
① 製造時CO2排出量の削減(リスク内容:事業活動により排出されるCO2に対して課税が強化され、事業費用が増加)
NIPPOではCO2の排出量を削減するため、CO2フリー電力への切り替えを実施済みです。
また、省エネルギー型の設備や機器類も積極的に配備しており、取り組み開始から2025年12月時点までに省エネ型の高効率バーナを導入した合材工場は116カ所になります。
さらに、機械式フォームドアスファルト装置によりアスファルト合材の製造温度を下げる中温化技術(ECOフォームド)を導入し、アスファルト合材の製造時の化石燃料消費量を削減することで、CO2削減を進めています。
② 燃料転換(リスク内容:排出量の上限規制が強化され、バイオ燃料やe-メタン・水素・アンモニア等の再エネ・新エネ導入が必要となり合材製造費用が増加)
工場で使用する燃料を重油類から都市ガスへ、切り替えを進めています。
③ 過酷な気象条件に対応した舗装技術の開発(リスク内容:過酷な気象条件に対応できる製品品質の確保が困難)
当社では、気温上昇による舗装変状を防止し舗装の耐久性を高めることでCO2排出量を削減する技術として、路面温度を低減する遮熱舗装(パーフェクトクール)や保水性舗装(クールポリシール)のほか、舗装自体の耐久性を高めた高耐久舗装(ポリシールLC、リペットペーブ、ハードアスコン等)の技術を保有しています。
遮熱舗装(パーフェクトクール)
アスファルト舗装は、夏の強い日差しを浴びて路面が60℃以上の高温になります。「パーフェクトクール」は、太陽光に含まれる赤外線を高反射させることで、路面温度の上昇を抑制し、舗装の耐久性を向上させることが可能です。本技術は2009年に国際道路連盟 (IRF)で 世界道路功績賞を、2011年に世界道路協会(PIARC) で最優秀革新賞を受賞しています。
右:パーフェクトクールコート施工例(車道 高知県高知市)
高耐久舗装(ハードアスコン)
ハードアスコンは、アスファルト混合物にエポキシ樹脂を添加することで、混合物の耐久性を向上させる舗装技術です。気温が高い環境においても、道路の長寿命化が可能です。
今後、より過酷な自然環境が想定されることを踏まえ、新技術・新工法の開発を進めてまいります。
■気候レジリエンス[8]の評価
NIPPOでは気候関連のシナリオ分析の結果に基づき、報告期間ごとに気候レジリエンスの評価を実施しています。特定したリスクと機会に対応するため、設備の更新や燃料転換・新技術の開発等を進めております。これらの取り組みの進展および、ビジネスモデルの調整には大規模な投資が必要であることから、これを経営戦略に織り込み、気候関連のリスクと機会に対応するための体制構築に努めています。市場における気候変動対策の速度および規模は、依然として不確実ではありますが、環境の変化に柔軟に対応できるよう、複数のシナリオに基づいて具体的な対応策を検討しております。
気候レジリエンスの評価の結果、NIPPOでは気候関連のリスクと機会についての対応策は、適切に検討できており、気候変動に対して短期~長期にわたり事業戦略および、ビジネスモデルを調整する能力を有していると考えております。
- 8.^気候レジリエンス:気候関連の変化、進展または不確実性に対応する企業の能力のこと。
リスク管理
NIPPOでは、事業活動に多大な影響を与えると考えられる各種のリスクを事業および財務への影響度を踏まえたリスク評価プロセス(財務インパクト評価)の方法で総合的に評価・分析しています。その結果、気候関連のリスクは経営戦略・事業活動に大きな影響を有すると考えており、組織全体のリスク管理体制へ気候関連のリスクを統合しています。
■組織が気候関連のリスクを選別・評価・管理するプロセス
気候関連のリスクに関しては、CO2削減委員会にて各部門の事業に関する気候関連のリスクの選別および事業への影響度の評価を行い、管理を行っています。
■選別・評価・管理するプロセスの総合的リスク管理への統合
特に重要リスクに関しては代表取締役社長から取締役会に報告されており、当社事業に多大な影響を与える他リスクと合わせ総合的に管理し、リスクの回避やリスクが顕在化した場合の影響を最小化するための対策等について議論し、意思決定を行っています。
指標と目標
気候関連のリスク・機会に対処していくための指標・目標として、CO2排出量を管理しています。
2030年度までにスコープ1・2の2020年度比49.8%削減、スコープ3の2020年度比25%削減を目標に、削減に取り組んでまいります。この目標はSBTiにより、パリ協定の目標達成水準に整合していることが認められています。また、最低でも5年に1度の頻度で見直しの検討を行うこととしています。
特に、スコープ1・2は自社からの排出であり、主要な責任があること、削減対策が排出量に大きく寄与することから、第一に取り組む必要があると考えています。スコープ2の削減に向け、対応可能な全事業所において、CO2フリー電力への切り替えを実施しています。また、スコープ1の削減に向けた活動の一環として、重油から都市ガス等への燃料転換を計画・実施しています。今後も2030年度目標に向けて、CO2排出削減の取り組みを推進してまいります。
【GHG排出量の算定内容】
①算定基準:GHGプロトコル
②算定対象ガス:CO2(二酸化炭素)、CH4(メタン)、N2O(一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、
パーフルオロカーボン類(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF6)、三ふっ化窒素(NF3)
③算定方法:排出原単位データベースを用いて算定
- 環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出などの算定のための排出原単位データベース(Ver.3.4)」
- 産業技術総合研究所「AIST-IDEA(Ver.3.4)」
④適用活動境界:GHG排出量算定の組織境界は「財務支配」(Financial Control)を適用
- 連結財務諸表の範囲と整合させることで、グループ全体として気候関連のリスクと機会に関するパフォーマンスを財務情と一体的に把握できるようにするため
(対象)
NIPPO(本社・支店・統括事業所・出張所・合材工場)、大日本土木株式会社、長谷川体育施設株式会社、
日鋪建設株式会社、株式会社MECX及び地域関連会社(192社)
⑤目標設定:セクター別脱炭素アプローチを用いて削減目標を設定していません
- 基準年比の総排出量削減(総量削減手法)により設定しています
CO2排出量実績(Scope1、2および3)
”〇”がついたScopeおよびカテゴリは第三者検証を受けています。
排出量【千t-CO2e】
改訂2版:2026年6月10日:年次見直しとしてガバナンス、想定シナリオ、リスクと機会を更新。
削減実績・目標に2024年度CO2排出量を追加。
改訂1版:2025年5月19日:SBT認定取得に伴い、CO2排出量と削減実績・目標を更新
初 版:2024年11月1日